慢性的に経過する皮膚の炎症で強い痒みを伴います。原因としては、皮膚が持っているバリア機能の破綻が大きく関与しています。
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アトピー性皮膚炎
アトピー性皮膚炎の定義
- 掻痒
- 特徴的皮疹と分布
(1)皮疹は湿疹病変で急性病変と慢性病変に区別
(2)分布
・左右対称性
・参考となる年齢による特徴
乳児期:頭皮・顔面に始まり体幹四肢に拡大
幼小児期:頚部・四肢屈曲部の皮疹
思春期:上半身に皮疹が強い傾向 - 慢性・反復性経過
経過において、乳児では2か月以上、その他では6か月以上を慢性とします。
- 上記1、2および3の項目を満たすものは、症状の軽重問わず、アトピー性皮膚炎と診断します。
- その他は、急性又は慢性の湿疹とし年齢や経過を参考にして診断します。
- 乳児や幼小児の湿疹病変を、1回のみの診察では、アトピー性皮膚炎の診断はできません。
病因
基本的に不明ですが、家族歴や生活環境が関係していると考えられます。
最近の知見では皮膚表面の角層に関与するフィラグリン遺伝子などの影響でバリア機能が低下していることが主な病因です。
治療
最も大切な事は、治療の継続です。症状が軽快したら治療を中断するのではなく、症状に応じた治療法を選択し、治療を継続することが重要です。
一般的に、小児に多い病気ですが、成長するにつれて自然に治る患者が多いのも事実です。
しかしながら、幼少児期に適切な治療を行わないまま放置すると成人になっても治らないことになってしまいます。重要なことは、幼少時期に適切な治療を継続することです。
また、最近は、成人~高齢のアトピー性皮膚炎の患者が増えていますが、生活環境の変化も一因と考えられています。
具体的に、アトピー性皮膚炎は遺伝的素因および外的・内的悪化因子があり、病気そのものを完全に治すことは困難です。症状を軽快させて、皮膚のいい状態を保ちながら自然に治るのを待つ対症療法しかありません。
治療法は、大きく内服療法および外用療法です。また、2018年よりデュピクセントの注射による治療法が追加となりました。(注射に関しては、当院では2022年より開始。デュピクセント、アドトラーザ、ミチーガを取り扱っています)
内服療法
- 抗アレルギー剤内服
- 副腎皮質ホルモン内服
- 免疫抑制剤内服
外用療法
- 副腎皮質ホルモン(ステロイド)外用
強いステロイドを塗り続けると皮膚が薄くなったり、多毛などの副作用が出現するため症状に合った薬剤を選択して、適正な期間使用することが大切です。 - 保湿剤外用
アトピー性皮膚炎患者の皮膚では、皮膚表面の角層に関与するフィラグリン遺伝子などの影響でバリア機能が低下しているため、皮膚が乾燥しやすい傾向がありますが、乾燥した皮膚に対して清潔な状態での保湿剤の外用は不可欠です。 - 免疫抑制剤外用
プロトピック軟膏は、ステロイドとは異なり長期間使用しても皮膚の萎縮や多毛などの副作用はありません。稀に外用によって火照り感が出現することありますが、顔面・頚部の湿疹には特に有用です。また、2019年にはJAK阻害剤コレクチム軟膏、2022年には副作用の少ないモイゼルト軟膏が追加となっています。
予防
アトピー性皮膚炎の発症には、ある特定の遺伝子が関与していることが解明されてきています。
皮膚表面の角層に関与するフィラグリン遺伝子などの影響でバリア機能が低下して、皮膚表面の水分が失われ乾燥肌になります。そこで、普段より保湿剤の使用が大切です。